「ピアノの詩人」として知られるフレデリック・ショパン。
彼の美しい旋律は今もなお世界中の人々を魅了し続けていますが、彼の音楽に対する深い洞察は演奏技術にも及び、多くのピアニストに影響を与えています。
その一つが「ハ長調が最も難しいので最後に練習せよ」と言うものです。
ハ長調と言うのは鍵盤の白鍵だけをドレミファソラシドと弾く調性で黒鍵を一切使いません。
楽譜もシャープ(#)やフラット(♭)が一切つかないので、一見簡単に見えるのです。
一般的にピアノを学ぶ際、最初に練習として取り組むことが多いのはハ長調(C major)でしょう。
実際、ピアノの初期段階で使うテキスト「バイエル」「ツェルニー」「ブルグミュラー」などはハ長調の曲から始まっています。
では、なぜショパンは「ハ長調が最も難しい」と言ったのでしょうか?
その理由はこうです。
人間の手は親指と小指の間に人差し指、中指、薬指が付きだしている形になっているので、手をピアノの鍵盤に乗せた時、親指・小指で白鍵、人差し指・中指・薬指で黒鍵を弾くのが一番自然なのです。
この場合、シャープが5つあるロ長調が一番弾きやすく、全て白鍵で構成されるハ長調が最も難しいのです。
ショパンは人間の手の構造から考えると、ハ長調こそが最も難しいスケールだと考えていたのです。
彼の弟子の一人であるエミール・フォン・ザウアーは、ショパンのレッスンについてこう語っています。
「ショパンは常に手の自然な形を重要視し、無理なストレッチや不自然な指使いを厳しく戒めた。
彼は、手の構造に合った調性から練習することで、努力なしに美しい音色と滑らかな演奏が可能になると説いていた。」
もしあなたがピアノを学んでいるなら、一度ロ長調のスケールをゆっくりと弾いてみてください。
手のひらが自然に鍵盤に吸い付くような感覚、指がスムーズに動く感覚を覚えるかもしれません。
ショパンが発見した、手の構造と音楽の奥深い関係性を、ぜひ自身の指で感じてみてください。


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