リストの超絶技巧練習曲を完成させた人

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 過去の記事「純正律と平均律」の記事で取り上げたけど、バッハが平均律を発明したことで1つの鍵盤楽器で新たに調律することなく24の調性で自由に演奏できるようになりました。

 その結果、バッハ以降の音楽家は24の調性全てを使って曲集を作ることに挑戦してきました。
 ショパンの24の練習曲は有名ですが、他にも
・フレデリック・ショパン・・24の前奏曲 Op.28
・ヨハン・ネポムク・フンメル・・24の練習曲 Op.125
・セルゲイ・ラフマニノフ・・Op. 3-2「鐘」、Op. 23(10曲)、Op. 32(13曲)で24の調性すべてによる「前奏曲」が完成
・アレクサンドル・スクリャービン・・「24の前奏曲」Op. 11、「12の練習曲」Op. 8+他の練習曲でほぼカバー
・シャルル=ヴァランタン・アルカン・・長調による12の練習曲 Op.35+短調による12の練習曲 Op.39
・ドミートリイ・ショスタコーヴィチ・・「24の前奏曲とフーガ」Op. 87
など名だたる作曲家がバッハの功績の上に芸術作品を構築してきました。

 フランツ・リストもその一人です。
 しかし、フランツ・リストは24の調性の内12の調性しか使いませんでした。

 どうして24曲ではなく12曲なのか?
 その理由には諸説があるので、その中の有力な説をあげておきます。

1.12曲作曲した時点で、先に進むよりも、元の12曲の内容充実に優先順位が移ってしまった
 リストの超絶技巧練習曲は「超絶技巧」と言う名前からもわかる通り、ピアノ演奏技術の限界に挑戦するものでした。
 それゆえに、「超絶技巧」に拘ったと言うものです。
 実はリストはこの超絶技巧練習曲を生涯で3度も改定しているのです。
 15歳(1826年): 当初は「すべての長短調のための48の練習曲」というタイトルで出版を予告しましたが、実際に書き上げたのは12曲だけでした。
 26歳(1837年): 第2版として「24の大練習曲」を出版しようとしましたが、やはり完成したのは12曲(第1版の改訂)のみでした。 40歳(1851年): 最終決定版である「超絶技巧練習曲」が完成。ここでも曲数は増えず、12曲のままでした。
 24曲以上で作曲する野心はあった、けどやっぱり12曲になってしまったところにリストの拘りがあったと思います。

2.作品の肥大化
 第2版、第3版と改訂を重ねるごとに、1曲1曲の内容が非常に濃密になり、演奏時間も技巧的な負荷も増大しました。
  単なる「練習曲」の枠を超え、12曲でひとつの壮大な宇宙が完成してしまったため、「これ以上曲を増やす必要性(芸術的な動機)」が薄れたのではないかと推測されています。

3.超絶技巧時代の終焉
 リストが最終版を完成させた40代の頃、彼はすでに「超絶技巧を売り回るピアニスト」としての活動に区切りをつけ、指揮者や作曲家(交響詩など)としての活動に軸足を移していました。
 リストにとって「超絶技巧」は若い頃の情熱の対象であり、24曲という数字を埋める作業よりも、過去の自分の「超絶技巧」を芸術として昇華させる(整理する)ことの方が重要になったのではとも言われています。

 諸々の理由によりリストは生涯をかけて12の練習曲で終わってしまった訳ですが、彼の「超絶技巧練習曲」は彼の死後、時を超えて完成するのです。
 しかも他人の手によって・・・。

 その人の名はセルゲイ・リャプノフ。
 フランツ・リストの崇拝者であり、フランツ・リストの意志を継ぐ者として、リストが使わなかったシャープ系の12曲を完成させ、「12の超絶技巧練習曲 作品11」として発表したのです。

 リャプノフがこの曲を書くきっかけには、師であるバラキレフの影響がありました。
 バラキレフはロシア音楽界の重鎮でしたが、同時に熱狂的なリスト崇拝者でもありました。
 リャプノフは師の影響を受け、リストのスタイルを研究し尽くした結果、ロシア人としての魂を持ちながらも、リストの書法を完璧に使いこなす稀有な作曲家となりました。

 バラキエフ自身も超絶技巧のピアニスト(ヴィルトゥオーゾ)として有名です。
 彼の作曲した「イスラメイ」は超絶技巧を要求されるピアノ曲として有名なので興味があれば聞いてみてください。

 曲集の最後を飾る第12番は、はっきりと「フランツ・リストの思い出に」と献辞が添えられています。
 この曲の冒頭には、リストの『超絶技巧練習曲 第1番「前奏曲」』と同じハ長調の音型が引用されており、リャプノフがこの曲集を「リストへのラブレター」あるいは「正当な続編」として世に送り出したことがわかります。

 リャプノフの12の超絶技巧練習曲 作品11の中ではNo.10 レズギンカが最も有名で人気があります。
憧れの曲」に挙げてますので興味があれば聞いてみてください。

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