BGMを発明した人

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 BGM(Background Music)と言う言葉を知らない人はいないですよね。
 仕事をしているとき、何かを食べている時、ゲームで遊んでいる時、ショッピングをしている時、特にその音楽に集中するわけでもなく聞き流している音楽です。
 今やどこに行ってもBGMのかかってないところは無いほどBGMは私たちの生活に浸透しています。

 この「BGM」と言う概念を生み出した人がいます。
 それがエリック・サティです。
 エリック・サティ、はショパン、リスト、ベートーヴェンなどと比べると比較的近代に近い生まれで、ちょっとマイナーですが、彼の曲は一度聴いたら忘れない印象的なものです。

 試しに彼の代表作である「ジムノペディ」を聞いてみてください。

「あ、これ聞いたことある」と思うはず。

 彼は1917年頃に「家具の音楽(Musique d’ameublement)」提唱し、彼の音楽が意識的に聴かれることを拒否し、家具のように空間に溶け込むことを目指しました。

 サティは、当時のクラシック音楽がコンサートホールで静かに、真剣に聴かれる「崇高な芸術」であるという慣習に対して、アンチテーゼを投げかけました。
 彼は音楽を、部屋の調度品(家具)のように、そこにあるだけのものとして捉えることを提案したのです。

 「家具の音楽」にまつわる有名なエピソードがあります。
 1920年3月8日にパリのガブリエル通りにある画廊「バルベザン画廊」で彼はある実験を行いました。

 この実験を行った目的は、聴衆に音楽を意識して聴かないという新しい鑑賞態度を体験させることでした。
 聴衆に事前に渡されたプログラムには下記の指示が書かれていました。

 「休憩中に演奏されるエリク・サティ氏とダリウス・ミヨー氏の『家具の音楽』は、今回初めて披露される作品です。
 私たちは、皆さんがこの音楽に注意を払わないよう、そして休憩時間をそのまま過ごすよう強く促します。
 この音楽が存在しないかのように振る舞ってください。」

 そして当日、演出家が企画した美術展の休憩時間(インターミッション)で演奏家たちには、聴衆が会場を出たり入ったり、おしゃべりをしたりする、普段通りの環境の中で、この音楽をひたすら繰り返して演奏し続けました。

 フルート、クラリネット、トランペット、弦楽四重奏など、複数の楽器が会場の異なる場所に分散して配置され、それぞれの楽器が短いメロディーやモチーフを個別に、かつ同時に、際限なく繰り返すというものでした。
 これは、音楽が意識の対象になりすぎないようにする工夫でした。

 しかし、実験の結果はサティの狙いとは真逆となりました。
 当時のパリの聴衆は、どんなに前衛的な音楽でも、演奏が始まると「芸術作品」として静かに聴き入る習慣が染みついていました。
 そのため、聴衆はサティが用意した短い反復フレーズにも注意を集中して静かに座ってしまったのです。

 音楽が「家具」として機能せず、通常のコンサートのように「鑑賞」され始めたことに、サティは耐えられませんでした。
 彼は激昂し、立ち上がって聴衆に向かって「喋り続けろ!」「歩き回れ!」「聴くな!」と大声で怒鳴りつけたと言われています。

 このエピソードは、当時としては単なる奇行として人々には写ったと思います。
 しかし、音楽の聴き方や役割を根本から問い直すという点において極めて画期的でした。

 これが、現代にあっては当たり前の「BGM」と言う音楽の新しい概念が生まれた瞬間でした。

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