バッハの「平均律クラヴィーア曲集」は、「平均律」ではなかった

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 過去の記事で、「平均律クラヴィーア曲集」によって平均律という考え方と、それがもたらす可能性が広く知られるようになり、最終的に平均律が今日の主流な調律法として定着するきっかけとなりました。
と書いたのですが、「実はそうじゃない」と言う説もあると言うことで、今回はその話をします。

 平均律クラヴィーア曲集と言うのは正式名は(Das Wohltemperirte Clavier)と言いまして、この”Wohltemperirte”という単語が「平均律」と訳されているのですが、これは正確には「良好に(うまく)調律された:Well Temperament」と言う意味なのです。
 本来「平均律」の正確な単語は(Equal Temperament)なのでバッハの本来の意図とは違うのではないかと言うことですね。

現代の「平均律」(Equal Temperament)と言うのは、
 特徴としては 1オクターブを完全に均等な12の半音に分割する調律法です。
 これにより、どの調性で演奏しても響きが均一になり、転調しても違和感がありません。
 現代のピアノのほとんどがこの調律を採用しています。

バッハが意図した「Wohltemperirte」(ウェルテンペラメント/良好な音律)は、
 特徴として「均等に」ではなく、「良好に(うまく)調律された」という意味合いです。
 これにより一部の調性(ハ長調など)は非常に澄んだ美しい響き(純正律に近い響き)を保ちつつ、遠い調性(嬰ハ長調、変ホ短調など)も演奏に耐えうる響きになるように調整されています。
 結果として調性によって響きや「雰囲気」がわずかに異なり、それが曲に固有の色彩を与えることになります。

 バッハが意図した調律法は「不等分律」の一種とされているのですが、12個の半音間の音程の幅をわずかに変え、調性によって音響的な個性を持たせる意図があったようです。
「あったようです」と言うのは、現代においても完全に再現された訳ではなく、諸説があるからです。

最も有名な説は、バッハの自筆譜の表紙に描かれた渦巻き模様が、特定の音律の構造を示しているというものです
こちらで解説されているのでご興味があれば参照ください。

 この渦巻き模様の解釈についても複数の説が存在しており、どの説がバッハの真の意図に最も近いのか、音楽学者の間で複数の復元音律が提案され、議論が続いています

 それぞれの復元音律は提唱者の名前で呼ばれ、下記のようなものがあります。
 ・キルンベルガー(Kirnberger)・・バッハの弟子の一人
 ・ヴァロッティ(Vallotti)・・18世紀の有名なオルガニスト
 ・リーマン(Lehman)・・上記の参考ページではレーマンともいわれている?現代の音楽学者
 ※実際、どういう音なのか聞いてみたかったですが、Youtubeには上がってなかったです(残念)

 結論として、現代では「バッハが用いたであろう」複数の不等分律が試され、再現されていると言えますが、その中の一つが完全な正解として確定しているわけではありません。

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